【コラム】合わせ目の処理

プラモデルにおける合わせ目とはプラモデルのパーツを組む際に生じる接合部のことです。本来なら存在しない線のため、完成後に不自然に映ります。これを処理することで違和感をなくしていきます。今回は接着剤による合わせ目の処理の方法を紹介します。

最近のキットでは目立たない処理が施されているものもあります。特に近年発売されたガンプラなどではパネルラインやデザイン上の段差に接合部を設定されていることが多いです。このような場合は合わせ目を消す処理は不要のため、組む際に隙間が生じないよう気を付けるだけで問題ありません。逆に合わせ目を消すつもりが先述のパネルラインなどのモールドだった場合、デザインを崩すことになるため仮組みなどを行ない、接着前に確認しましょう。

合わせ目を消す方法として接着剤を用いる方法がポピュラーですが、接着剤の種類によって方法が変わります。ここではスチロール接着剤の張り合わせタイプと流し込みタイプの2種類と瞬間接着剤をご紹介します。いきなりキットで実践するのが心配な場合はプラ板や不要なパーツで練習してみましょう。

スチロール系接着剤

模型用接着剤(=スチロール接着剤と言います)のなかでもオーソドックスなタミヤセメント(白ビンや六角ビンに詰められているタミヤの接着剤)のような粘度の高い接着剤を用いるやり方です。流し込み接着剤が登場するまでは、合わせ目処理はこの接着剤か瞬間接着剤の2つに分かれていたと思います。最近では流し込み接着剤がメジャーになってきたため、貼り合わせタイプという呼び方もされ始めました。

貼り合わせタイプによる合わせ目の処理方法

スチロール接着剤はプラスチックを溶かすため、この性質を用いてパーツ同士の合わせ目のプラスチックを溶かすことで合わせ目を消します。
各パーツの接合部に接着剤を塗って貼り合わせるのですが、この際、接着剤がはみ出るぐらいに接着剤を塗ります。

乾燥には時間がかかります。表面だけでなく、内部の乾燥もあるため2、3日程度はそのままにした方が良いと思います。接着剤が乾燥後、はみ出して硬化した接着剤を削ります。400番の紙やすりで大まかに削った後、番手を上げた800番などのやすりで仕上げましょう。
うまくはみ出ない場合は、貼り合わせる前に時間を少し置いて接着剤がプラスチックが溶けるのを待ったり、一度軽く貼り合わせた部位を再度離して接着剤を塗りなおした後、貼り合わせると接着剤がはみ出てくれることが多いです。

貼り合わせタイプのポイント

塗布する量をコントロールできるため隙間が大きいパーツに対しても合わせ目を消すことができます。
先述の通り、乾燥には時間がかかります。昔はこれしかなかったので、あまり気にしてないのですが、流し込みの速乾タイプが出てからはこの部分をネガティブな部分として捉えられる機会が増えた気がします。
接着剤がパーツを溶かす範囲(=溶け出しとも言います)が大きいのも特徴のひとつです。強度確保の面で見ればメリットになりますが、プラスチックを溶かして乾燥するため、接着面以外の部位を引っ張ることになります。近年のCADなどで設計された緻密なキットでは、溶け出しが大きいとパーツ寸法に狂いが生じることがあり、接着されたパーツ同士の組付けにおいて整合が合わないケースがあります。また、引っ張る力が強いと引っ張られた部位の表面に凹みが生じます。これを”ヒケ”と呼びます。流し込みタイプに比べるとヒケが大きくなりがちです。
なお、接着剤を塗布する際に指についたり、貼り合わせた後にはみ出た接着剤が指や他のパーツに付着することもあるので、注意が必要です。色々とネガティブな面も述べましたが、普通に使う分にはそれほど目立つ欠点はないですし、扱いやすいため僕はメインで使用しています。

流し込みタイプによる合わせ目の処理方法

近年メジャーになってきた方法として流し込み接着剤を用いたものがあります。流し込みタイプの接着剤はスチロール接着剤よりも水っぽい粘度でサラサラとした接着剤です。白ビン同様、スチロール接着剤でプラスチックを溶かす性質はあるため、合わせ目を消す仕組みは同じです。

接着剤を塗らずにパーツを貼り合わせた状態で固定して、接着剤を流し込みます。
ガンプラなどのようにパーツ同士で外れずにに固定できる場合、わずかに隙間ができる程度に貼り合わせ、この隙間に接着剤を流し込みます。
その後、溶剤が全体に行き渡ることを確認したらしっかりと貼り合わせて、接着剤をはみ出させます。後の処理は貼り合わせタイプと同じようにはみ出た部位を乾燥後に削ります。

流し込みタイプのポイント

流し込みは塗布が必要な部分にのみ溶剤が流れていくため表面をキレイに保ちやすいです。戦闘機のキャノピーなど、表面に接着剤が付着するリスクを減らしたいときは流し込み接着剤を使用します。速乾タイプの場合は乾燥時間が早く済むのもメリットのひとつですね。流し込みタイプを持っているから張り合わせタイプは不要ということはなく、それぞれに向いた接着部位がありますので、どちらも適切に使い分けることをオススメします。

瞬間接着剤

上記の方法とは異なり、プラスチックを溶かさずに固定する方法が瞬間接着剤(=瞬着)を用いたやり方です。
作業時間を大幅に短縮させることができます。スチロール系接着剤とは異なり、硬化後のヒケはありません。
瞬着は色々なタイプがあります。プラモデル用でない場合、接着剤そのものの食いつきが良くないため、作業時に接着剤が剥がれることや削りにくいこともあるので、購入時に確認しましょう。
具体的な方法はスチロール系と同じです、溶剤の粘度に応じて貼り合わる前に塗布しするか、仮組後に流し込み、乾燥後にはみ出た部位を削り取ります。WAVEの黒い流し込みタイプなどは流し込んだ部位の把握が容易になるため使ってみたいアイテムです。

合わせ目処理後

乾燥後に#400→#800でペーパーがけを行なったところ

合わせ目が消えたかどうかが一目で判断つきにくい場合は実際に触りましょう。
指や爪、デザインナイフの先などで傷をつけないよう表面をなぞり、段差などの感触がなければ処理ができています。
合わせ目を消しただけではやすりがけの跡があるほか、境界線の色が他の部分と異なるため、このまま組み立てると目立ってしまいますので、塗装も行いたいところです。塗装前にサーフェイサーを使うことで処理の確認や表面の細かい傷を埋めるほか、塗装の下地を整えることができます。

合わせ目が残っていた場合はパテを使用して隙間を埋めていきましょう。
隙間に入りやすいよう粘度の低いパテを使用すると良いでしょう。ビン詰めの溶きパテやタミヤパテを薄め液で溶いたものを利用することが一般的です。
パテを隙間に盛って十分に乾燥した後にやすりがけをおこない表面を仕上げましょう。
※タミヤパテなどは揮発・乾燥の段階でパテの体積が減るため、乾燥を待たずに行なうとヒケてしまうので注意しましょう。パテの種類については今後まとめて紹介したいと思います。