【キットレビュー】ハセガワ 1/72 F-16

今回、レビューするのはハセガワの1/72 F-16CJ[ブロック50] ファイティングファルコンです。過去の作例写真を載せつつ、実機と模型の紹介をしていきます。

F-16 ファイティングファルコンとは

F-16 ファイティングファルコンはアメリカのジェネラル・ダイナミクス社が開発した第4世代ジェット戦闘機です。

アメリカ空軍では高価なF-15と相対的に安価なF-16を織り交ぜて運用するハイ・ローミックスと呼ばれる運用をしており、作戦機の半数を占めます。西側の同盟諸国への輸出にも成功したことで4,500機以上生産されるベストセラーになりました。

これまで戦闘機の開発は高性能を目指し大型化に伴い価格が上昇するという恐竜的進化を続けてきました。
アメリカ空軍はF-X計画によりF-15を1972年に受領しましたが、高性能な分、機体価格は高騰したため、これまで配備していたF-4やF-104を更新できる数を調達することが難しくなりました。このため安価な軽量戦闘機を開発するF-XX計画が発動され、開発されたのが本機です。

F-16は開発当初から従来の戦闘機に比べ、以下のような革新的技術を取り入れていることが大きな特徴です。

  • 主翼と胴体をひとまとめに成型するブレンデッドウィングボディ(BWB)により、揚力を生むための主翼面積の増大、内部構造の簡素化、燃料搭載量の増加を実現しました。
  • 機体の操縦は油圧などを用いる機械的な接続ではなく、コンピュータを介することで補正制御するフライ・バイ・ワイヤ(FBW)を用いています。不安定な機体の安定化に貢献しているほか、自動制限機能が付与されることで失速や荷重などの飛行制限をパイロットが考慮する必要がないケアフリーな操縦が可能となりました。
  • 上記のFBW技術により操縦桿の配置が自由に行えるようになったため操縦桿は操縦席の右側に配置され、航空機としては初めてサイドスティック式を導入することになりました。
  • コクピットは機体の上部に位置することに加えてフレームを持たないキャノピーため、従来の戦闘機に比べて視界は向上しています。このコクピットに収められた座席は後方に傾いており、パイロットの荷重耐性の向上に貢献しています。

1974年の開発当初は短距離で敵戦闘機と交戦する軽量戦闘機として誕生しましたが、多段階改良計画(MSIP)によってアップグレードを重ねることで多用途戦闘機へ発展し、今では西側各国が配備するスタンダードな戦闘機としての地位を確立するまでに至りました。派生数が多いため同じマイナーコード(型式番号末尾のアルファベット)でも生産ブロックで区別されることがあります。

キットについて

このキットはハセガワから1,200円(税抜)で発売されているキットでブロック50を再現したものです。

この生産型から出力増強型エンジンを搭載し、レーダー火器管制装置が更新され空戦処理能力が向上しているほか、インテーク右側に戦術ポッドを取り付けることで防空レーダーなどを発見、攻撃するワイルドウィーズル任務も対応可能になっています。

キット自体は昔から発売されているハセガワB帯のF-16A プラスやF-16Cの金型に追加ランナーを加えたものです。胴体下面のパーツは機首付近にヒケが見られます。モールドがやや甘いため気になる方はスジボリを彫り直した方が良いと思います。

追加となったパーツはパイロット、パイロン、メインギアのタイヤ、インテークと空対空ミサイルのAIM-120 AMRAAMと対レーダーミサイルのAGM-88 HARMとその照準システムのAN/ASQ-213HTSポッドです。一方、余剰パーツには(古い型ですが)サイドワインダーやパイロットがありますので、他のキットに使いまわすこともできます。

かつて、F-16の翼端はサイドワインダーが取り付けられ、AMRAAMは主翼下のパイロンに装備されていましたが、最近ではこの作例のように取り付け位置が入れ替わっています。

翼端に兵装を取り付けた場合、兵装がウイングレットと同じ役割を果たします。ウイングレットとは翼端渦を減少させたり発生方向を上方に移動させることで空気抵抗(誘導抗力)を減らし、フラッターと呼ばれる振動現象を抑える航空機の翼端に取り付けられる板のことです。

AMRAAMの方がサイドワインダーよりウイングレットとして得られる効果が大きいため、兵装の取り付け位置が入れ替わったようです。

サイドワインダーとAMRAAMではパイロンが異なるため、パイロンを取り換える指示が説明書に記載されているほか、左側に主翼下に追加のパーツを取り付ける指示があります。ミリ単位で指示があるため、欲を言えば原寸大の図が欲しかったです。

総評

ハセガワのキットなだけあって組み立てやすいキットです。

シンプルな構成の小型機ということもあり、パーツ点数も少なく、複雑な迷彩でもないので塗装のハードルも低いと思います。これから飛行機の模型を作ろうとしている人にもオススメしたいキットですね。

西側のスタンダードな戦闘機として認知されていることもあり、フライトシューティングゲームなどでは序盤に入手できる万能機のイメージが強くありますね。

無誘導爆弾やマーベリックミサイルなど、搭載可能な兵装も豊富にあるため色々なバリエーションを再現するのも面白いと思います。