【キットレビュー】アオシマ 1/700 日本重巡洋艦 愛宕

今回紹介するのはアオシマより発売された1/700 日本重巡洋艦 愛宕(旧キット)です。旧キットに現行版のエッチングパーツを使用し、張り線を加えています。

愛宕について

愛宕は高雄型重巡洋艦の2番艦になります。高雄、愛宕のほか鳥海、摩耶が続き、計4隻が同型艦として建造されました。

この高雄型重巡洋艦は妙高型重巡洋艦に続いて設計された巡洋艦であり兵装、配置、性能について大きな差がないため準姉妹艦とも言える存在です。

愛宕は呉の海軍工廠にて1932年3月に竣工しました。本型の1番艦である高雄より先に完成したため本型を愛宕型と呼ぶ声もあります。

主砲は前級の妙高型と同様の三年式二号 20.3㎝砲ですが、仰角が70度まで向けることができるE型砲塔に更新されています。これは対空射撃を考慮したもので砲弾も対空砲弾が用意されたものですが、実戦で運用できる性能は有していませんでした。

高角砲は当初12cm高角砲を装備したものの、上述の主砲の対空性能に期待していたため、妙高型から2門減った4基4門でした。後に各艦で対空装備を改装しており、愛宕においては12.7cm連装高角砲4基8門に換装したうえで、対空機銃も強化・増設しています。

また水雷兵装は61cm水上魚雷発射管を4基、魚雷16本を上甲板に装備しています。これまで魚雷は艦内の固定装備でしたが、技術進歩により魚雷の強度が向上し、高い位置からの投射が可能になったため被弾時や運用時において有利な上甲板へ移動しました。

前級の妙高型重巡洋艦の攻撃力を維持しつつ、問題点であった居住区画の拡張と艦隊指揮能力を付与するため大型の艦橋を備えていることが外見上の特徴になっています。

とりわけ愛宕と鳥海は戦時の旗艦施設を必要としたため、外見上は高雄、摩耶と変わらないものの、設備は充実していました。この艦橋によって重心が高くなることを防ぐために軽合金が多くの部材に使用されています。

この独特のシルエットから威容のある城郭と評する声もあった一方、被弾面積が大きくなることを懸念する声や、現場の要求を技術者が無節操に受け入れたことで艦の強度や安全性がおろそかになっているとの指摘もありました。事実、1934年に発生した友鶴事件や翌年の第四艦隊事件は武装の充実化を図るあまり、船体強度不足が露呈した結果となりました。

幸運なことに高雄型はこの2大海難事件をフィードバックした技術的検証でも大改装を必要とせず、艦隊の中堅として活躍しました。

太平洋戦争開戦時、愛宕は第二艦隊の旗艦として南方攻略作戦に従事した後、ミッドウェー海戦や南太平洋海戦に参加しました。1944年10月のレイテ沖海戦にてアメリカ潜水艦ダーターの雷撃を受け浸水、転覆の後沈没しました。

キットについて

アオシマからは「日本海軍重巡洋艦 愛宕 1942」という商品名のキットが発売されていますが、作例写真は同社の旧キット「ウォーターラインシリーズ No.17 日本重巡洋艦 愛宕」です。これまで製作した那智、利根の製作経験からウォッシングを加えつつ、エッチングパーツを適宜使用することをテーマに製作しました。

旧キットらしいシンプルな内容のため、手を加えなければ速乾性接着剤を用いて1日で組み上げることができる構成になっています。

艦橋は現行キットでは艦橋となるクリアパーツを挟み込んで組み立てるのに対し、旧キットは艦橋を上からシールで再現する割り切った仕様です。

旧キットでは挟み込むことが難しいため現行用エッチングパーツを上から接着することにしました。

エッチングパーツは利根製作時と同様、現行版キット用のエッチングパーツから流用できそうな個所(カタパルト、クレーンなど)を置き換えています。

対空機銃や上部構造物は旧キットのままですが、ディテールはそれほど悪くない印象です。

現行版キットと異なり雷装の再現はオミットされており、両舷の開口部のみ再現されています。また、砲塔部についてもポリキャップは使わず接着するため、完成後に砲塔の向きを変えることはできません。

総評

那智、利根、愛宕と3隻続けて製作したことで少しずつですが、エッチングパーツの取り扱いや空中線の張り方など、艦船模型に対して自分なりのアプローチの仕方が分かってきました。

このキットに限ったことではありませんが、過去に製作した艦船模型を改めて見返してみると汚しがオーバースケール気味なので今後はもう少し控えめにしてみようと思います。