【キットレビュー】ハセガワ 1/700 日本重巡洋艦 青葉

今回紹介するのはハセガワの1/700スケールキット 日本重巡洋艦 青葉です。青葉は青葉型重巡洋艦の1番艦になります。艦名は京都府と福井県の県境に位置する青葉山より名づけられました。

青葉型重巡洋艦について

当初は古鷹型重巡洋艦の同型艦として建造予定でした。古鷹型は主砲に50口径三年式20cm砲は6基採用していましたが、人力による装填形式であったため、砲内部に用意した弾を打ち尽くすと弾薬庫から砲弾を人力で運搬する必要があり、発射速度が遅くなるという欠点がありました。

この古鷹型をワシントン海軍軍縮条約にて定められた「補助艦艇は排水量1万トン、主砲最大20.3cm以内」という基準を達成しつつ、性能の向上を目指したのが青葉型にあります。

基本設計は古鷹型に準じていますが、上述した装填速度の欠点を克服するために主砲を20cm単装砲6基から20cm連装砲3基へ改められていることが大きな特徴として挙げられます。

また重巡洋艦に初めて水上機用カタパルトを装備したことでも知られています。

もともと古鷹型も水上機の運用能力はありましたが、カタパルトが実用化されていなかったため、砲塔の上に搭載した水上機を滑走台に接続して海面へ滑り落とす形で運用していました。しかし滑走台への接続に時間を要することと、砲撃時に水上機の破損リスクを伴うものでした。この青葉型では火薬式のカタパルトを装備することで、航空機の運用能力が向上し、索敵能力の強化が図られました。

青葉について

1927年9月20日、三菱長崎造船所で竣工しました。姉妹艦である衣笠は青葉より早く起工しましたが、進水・竣工は青葉のほうが先になっています。なお青葉型は青葉、衣笠の2隻のみの建造となりました。

太平洋戦争開戦時、青葉の所属する第六戦隊は南洋部隊に編入されグアム攻略作戦やラバウル攻略作戦に参加しました。1942年8月、アメリカ軍がガダルカナル島とフロリダ初頭に上陸を開始したことを受け、青葉はガダルカナル島方面へ出動します。第一次ソロモン海戦にて第六戦隊の各艦と共にオーストラリア軍、アメリカ軍の重巡洋艦4隻撃沈、重巡洋艦1隻、駆逐艦2隻大破という戦果を挙げました。

同年10月11日、ガダルカナル島のアメリカ軍の飛行場であるヘンダーソン基地へ艦砲射撃を実施するために出撃した際、米艦隊の待ち伏せに遭いサボ島沖海戦が勃発、青葉は敵重巡洋艦の初弾を受け戦闘能力を喪失する被害を受けますが、戦場の離脱に成功し10月15日にはトラック泊地へ帰投後、呉海軍工廠で修理を受けることになりました。

1943年2月、修理を終えた青葉は第八艦隊に編入、ソロモン方面へ向かうことになります。4月に同方面のニューアイルランド島で作戦準備中にアメリカ軍の爆撃を受け被弾、大火災を引き起こし航行不能に陥る被害を受け青葉は再び修理のため呉へ帰投することになりました。修理を受けた際に破損していた機関部は修復されなかったため最高速力が5ノット減の28ノット程度まで落ちることとなります。同年の11月に第一南遣艦隊第十六戦隊に編入され翌月にはシンガポールへ進出しますが、先の速力減少を受けて輸送任務に従事することになりました。

1944年10月、第二遊撃部隊へ編成替えののち、兵員輸送に従事していた中、ルソン島でアメリカ軍の潜水艦の雷撃で大破しました。軽巡洋艦鬼怒に曳航されマニラ湾へ入港するも、入港翌日にアメリカ軍機動部隊の攻撃に見舞われました。ここでも青葉は応急修理によって5ノットの航行が可能になったことで、かろうじて呉へ帰投を果たしています。呉に帰投後、青葉は修理の見通しが立たず呉海軍工廠の近くで係留放置されることになります。

1945年7月、アメリカ軍機動部隊の呉軍港空襲により防空砲台として機能していた青葉も猛攻に晒され、大破することになります。最終的に艦内は浸水により着底。そのままの状態で終戦を迎えることになりました。翌年、播磨造船により解体され、その生涯を閉じました。

キットについて

ハセガワより2009年10月に発売されたキットです。価格は税抜きで2200円です。これまで重巡洋艦は旧キットばかり作っていたので、現行キットの製作は非常に新鮮でした。

今回は空中線のみの追加です。各パーツのモールドがシャープなためエッチングパーツなどを使わずストレートに組んでも精密感のある仕上がりになります。

構造物は左右貼り合わせのものが多いので合わせ目の処理は慎重に行う必要があります。

飛行甲板下部に設置された魚雷も再現されています。

船体が左右貼り合わせる方式は珍しいような気がします。普通に組むと作例のように艦首左舷の合わせ目が目立つので、気になる方は注意してください。

総評

青葉は後発の重巡洋艦に比べてスッキリとしたスタイリングで個人的には好きな形をしています。

複数回大破に見舞われながらも戻ってくるため「ソロモンの狼」との異名がありますが、第一次ソロモン海戦以外では大きな戦果は挙げておらず、悪運はあるものの戦運に関してはやや恵まれていなかったように思います。

各部の造形は良好でストレスなく組むことができるので始めたての方にもオススメしたいキットです。艦橋や煙突など中央部に集中しており、それだけで密度が高いので、艦尾のカタパルトや飛行甲板と艦首のアンカーチェーンなどをディテールアップするとバランスが取れて良いと思います。