今回ご紹介するキットはタミヤの1/48スケール、ソビエト自走砲 SU-122です。作例写真と共に実機とキットの紹介をしていきます。
SU-122とは
SU-122とはソビエトが開発した自走砲です。
1941年6月、第二次世界大戦中に始まった独ソ戦でドイツ軍が歩兵支援に使用していたⅢ号突撃砲にソビエト軍が興味を示したことが誕生のきっかけです。
1942年10月、ソビエトにおいて戦車生産が順調に進み始めたタイミングで国家防衛委員会は主力戦車T-34の車体を基に歩兵支援用の中型突撃砲の開発をウクライナのウラル重機械工場に命じました。同工場では発注以前より自走砲の研究をしていたこともあり、開発は短期間で進められました。11月末には試作車両(U-35)を完成させ、12月にSU-122として制式化および量産開始に至っています。
SU-122の設計はT-34中戦車の車体を基に、完全密閉式の戦闘室を新設したものとなっています。T-34譲りの防御力と機動性で歩兵部隊の直接支援任務では優れた能力を示し、防衛拠点の突破戦などで活躍しました。
自走砲は戦車と異なり旋回式砲塔を持たないため、同じ大きさの戦車よりも大型の火砲を搭載することができました。基となったT-34の主砲は1940年の生産型で76.2 mm L-11、1941年以降でも76.2 mm F-34ですが、SU-122は122mm榴弾砲M-30を搭載しています。
この火砲は砲弾と発射薬が別々のため、装填に時間がかかり、発射速度は毎分5-6発と抑えられていたほか、砲弾の初速も低く、装甲防御力を改善させたドイツ戦車には苦戦を強いられることになりました。
自走砲のもう一つの強みが、生産の簡略化やコスト削減が可能という点です。この強みを活かし、1943年1月の配備以降、同年の8月までに1,000輌以上生産され、様々な戦線に投入されました。
キットについて
タミヤから2006年に発売されたキットです。SU-122に特に思い入れはないのですが、冬季迷彩の練習がしてみたいと思い、大きな主砲がカッコイイという単純な理由から購入しました。
シャーシはおなじみのダイキャスト製のため、ホイール周りの部品は瞬着を用いて固定しています。
砲身はポリキャップにより可動させることができます。実機は上下に-3~26度、左右に10度ずつ動くようです。キットでは上下にスイングするものの、左右は厳しい印象です。
今回は塗装後に冬季迷彩やウェザリングを施してみました。ケープ剥がしとも呼ばれる方法です。
本体色のほかに使用するのは冬季迷彩に用いる色の水性塗料、水溶性のヘアスプレー、クリアコート(光沢)を用意します。
ウェザリングにはタミヤのウェザリングマスターとクレオスのウェザリングペーストを使用しました。冬季迷彩の具体的な手順は以下となります。
- 下地となる本体色(Mr.カラー 136番ロシアングリーン(2))を塗装し、表面を保護するためにクリアーでコートします。塗料の剥がれやすい光沢クリアーが良いでしょう。
- クリアー乾燥後に水溶性のヘアスプレーを全体に薄く吹き付けます。何度もベッタリ塗ると乾燥後に水性塗料の下からひび割れを起こしますので要注意です。
- ヘアスプレーを吹いた上から水性塗料でうっすらとエアブラシで吹き付けます。水性塗料の塗膜が厚いとヘアスプレーを溶かす水分が行き渡らないため、気を付けましょう。
- 乾燥後、水を含んだ筆で表面を擦ってやるとヘアスプレーの層が溶けて塗装を剥がすことができます。筆で擦るだけでなく、爪楊枝などで引っ掻くことで剥がれ方に表情を付けることができます。木の枝などが引っ掛かりそうな箇所に行なうと良いアクセントになります。
- 剥がし終えたらつや消しクリアーで全体を保護して完了です。作例ではこの後にウェザリングペーストとパステルでウェザリングをして、泥やススを再現しています。
総評
旋回砲塔を持たない自走砲のため、車体の組み立ては非常にスムーズでした。小さい部品の接着でパーツの紛失に気を遣うことがあったくらいでしょうか。
履帯部品はバラバラの部品を組み立てる方式になっています。この組み立てがなかなかピッタリとはまらず苦戦しました。戦車模型で履帯の組み立ては避けられないので早く慣れておきたいところです。
ヘアスプレーを用いた塗装の剥がれ表現は今回が初めてで勝手が良くわからず、失敗をカバーするべく白を塗り重ねてしまい、剥がせなくなり滅入りそうになりました。本体色の塗装からやり直し、なんとか完成まで漕ぎつけました。事前にプラ板などで練習しておくべきだったと反省しています。いずれ、一つのテーマの記事として取り上げたいと思います。