【コラム】デカールについて

プラモデルでエンブレムや部隊番号、コーションマーク(注意書き)を再現する場合、主にシールとデカールが使用されます。
シールは模型以外でも広く普及しているため、誰でも予備知識なく扱うことができると思います。しかし、デカールはプラモデルを作るまで存在を知らなかった方もいるのではないでしょうか。今回は、このデカールについて説明してみたいと思います。

水転写式デカールについて

一般的にデカールと呼ばれているものは水転写式と呼ばれるタイプです。
台紙から剥がしてそのまま貼り付けることができるシールに対して、剥離や貼り付けの際に水を用いる必要があります。このため水転写式と呼ばれます。台紙から貼り付ける際に滑らせることからスライドデカール、スライドマークとも呼ばれます。具体的な貼り付け方は以下の通りです。

1.貼り付けたいデカールのみ、ハサミやカッターなどで切り離します。

2.切り離したデカールを水に濡らしてデカールが台紙から剥離するまで待ちます。この時間はデカールによって異なります。

3.デカールが台紙から動かせるようになったら貼り付けたい箇所へ台紙から滑らせるように動かします。

4.貼り付ける位置に固定できたら綿棒などで余計な水分を拭い取り、乾燥させます。

デカールは薄く、柔らかいため表面に定着しやすいですが、貼り付けるものであるため、後付け感がどうしても出てしまいます。
貼り付けた後に全体をクリアーで覆うとこの後付け感を解消させることができます。クリアーを厚く吹き重ねてから全体を研磨してデカールの厚みのギャップを埋める作業を「研ぎ出し」と呼び、カーモデルなどでは重要な作業になります。
カーモデル並みの研ぎ出しとはいかないまでも、表面の保護やツヤを整えるためにも、乾燥後にクリアーコートをセットで行なう事をオススメします。

デカールはキットに付属されているものやサードパーティーより発売されているもののほかにも自作することができます。各社から色々な方式の物が発売されており、中には家庭用のインクジェットプリンタやレーザープリンタなどから印刷することができます。安価なものだとデカールの質は正直メーカー品に劣りますが、「どうしてもこのマークのデカールが欲しい!」という方は自作も視野に検討しましょう。

デカールの貼り付けを際に使用する道具

デカールを貼り付ける際は水を使わなければならないため、水を入れておく容器が必要になります。塗料皿などでも構いませんが、大きいサイズのデカールだと濡らしにくいので小さな灰皿があると便利です。また、デカールを貼り付けた後に余計な水分を拭いとる時は綿棒があると便利です。どちらも100円ショップなどで入手可能です。

デカールが固い、または貼り付け位置の形状が複雑な場合は貼り付けに苦労することがあります。こうした場合は軟化剤を使うことでデカールを柔らかくすることができます。GSIクレオスのマークソフターなどがポピュラーですね。
使用方法について、本体には貼り付けの前後に塗布するよう記載がありますが、塗布する量が多いとデカールが柔らかくなりすぎてしまい、シワが出来たり、破けたりするため貼り付けた後、上から少量塗布してやる方がリスクが少ないです。
デカール軟化剤は塗りすぎるとデカールが溶けるので、密着が確認できたらすみやかに塗布した軟化剤を拭いましょう。綿棒があるとシワを伸ばしながら拭き取りができます。また、水溶性のため、水を適宜足してやることで急激な軟化を抑制することもできます。

デカールのノリが弱く固定できない場合、木工ボンドを薄めてつなぎに使用することもできますが、GSIクレオスのマークセッターやタミヤのマークフィッターなどの補助剤も発売されています。これはノリの成分だけでなく、上述の軟化剤の効果も若干あります。貼り付ける箇所にあらかじめ塗布することで密着力を上げてくれるため、普段の貼り付けの際はこれを使用しています。小さく剥がれやすいデカールの場合、デカールを貼り付けた後に上から塗布してやると貼り付け位置の微調整が容易です。

シルバリングについて

この写真はF106A デルタダートの主翼ですが、”USAF”のAからFにかけてシルバリングが発生しています。

シルバリングとはデカールを貼り付けた後、ところどころ馴染まずに光が照り返している状態を指します。デカールが表面に定着しなかったために空気が入り込み、隙間(気泡)が生じているのです。
艦船模型の空母甲板の白線などはほとんどのエリアが透明で面積が広く、シルバリングが発生しやすいため注意が必要です。デカールを使わず、塗装で再現できれば良いのですが、数字や艦名などはデカールを使わざるを得ないケースもあります。

シルバリングが発生してしまった場合、以下の方法で目立たなくさせることができますが、デカールを傷つけるためリスクが大きい作業になることをあらかじめ理解しておきましょう。

1.デザインナイフで目立たないところに切れ込みを作ります。

2.デカール軟化剤を切れ込みの上から塗布します。デカールが破けたりシワになる前に綿棒を転がすなどして軟化剤を拭いましょう。

シルバリングは表面がざらついていると発生しやすいため、デカール貼り付け前に表面を滑らかにしたり光沢仕上げにしておくと予防することができます。

ドライデカール(インレタ)

水転写方式のほかに乾式転写方式もあります。ドライデカールという呼び名の方が一般的です。
ドライデカールは感圧式の接着剤が塗布されており、水を使わず表面をこすりつけることで転写させるデカールで、インレタ(インスタントレタリング)とも呼ばれます。ガンプラの初期の頃のマスターグレードモデルに同梱されていますね。
水転写式と異なり透明なフィルムがない分、シルバリングが起きず、リアルな仕上がりになるのですが、貼り付けが難しいのがネックです。
貼り付け方は以下の通りです。

1.貼り付けたい部位のみフィルムから切り出して、貼り付け箇所に固定し、爪楊枝やボールペンの先などでこすりつけます。バーニッシャーと言う専用工具がありますが、尖りすぎず硬いものであれば代用可能です。100均で売られているような金属製耳かきなども使えます。

2.色が変わったらゆっくり剥がして確認します。定着していなければフィルムを再度同じ位置へ載せてこすりつけます。ものによっては定着後にリケイ紙(ドライデカールの下敷きになっている白い紙)を上から被せてこする必要があるものもあります。

転写する過程でパーツの破損リスクがあることや定着しているかどうかが剥がすまで確証が持てないこと、やり直しが難しくほぼ一発勝負であることなどデメリットが多いため水転写式に比べて普及していないのが現状です。こちらも表面の保護のためにクリアーコートは行ないましょう。

ドライデカールはあまり使用する機会はないかもしれませんが、水転写式デカールは幅広いジャンルで採用されているため、基本的な使い方は抑えて置きたいポイントです。慣れてない場合は、事前に不要なデカールなどで練習しておきましょう。

最後に

今回は2種類のデカールとシルバリングについてご紹介しました。キットに付属するデカールは予備が少なく、初めのうちは扱いに億劫になるかもしれません。しかし、デカールの有無で完成後の印象は大きく変わりますので、扱い方は覚えておきましょう。