【キットレビュー】HOBBYBOSS 1/72 F-5E タイガーⅡ

これまでガンプラのレビューを続けていましたので、趣向を変えて航空機を取り上げたいと思います。今回の紹介するのはホビーボスの1/72スケール、F-5E タイガーⅡです。

F-5E タイガーⅡとは

F-5E タイガーⅡは第一世代の超音速ジェット戦闘機です。

1950年代、冷戦の緊張により戦闘機の需要が高まることを見据えたアメリカの航空機メーカーは大型戦闘機の開発に着手しました。しかし大型戦闘機は価格が高くなるため、ノースロップ社は経済的な事情により防衛費に予算を割けない国はこうした大型でコストのかかる戦闘機ではなく、安価で運用コストが低い小型戦闘機の需要があると睨んでいました。

この設計思想により開発された小型の戦闘機、F-5A”フリーダムファイター”は安価で扱いやすく、整備性にも優れていたため、西側陣営向けの軽量輸出戦闘機として実績を残すことに成功しました。

基本的な航法装置と簡単な照準器のみでレーダーは搭載していないため、昼間の迎撃任務と対地攻撃のみという初歩的な戦術ミッションに割り切った設計ですが、芝地や未舗装の滑走路でも離着陸ができたため整備の行き届かない飛行場でも運用できたほか、短時間での再出撃(防空任務で8分ほど)に柔軟に対応できました。また、軽量化により機動性、敏捷性は良好で空戦性能は当時の高性能機F-4”ファントムⅡ”に匹敵するものでした。

開発したアメリカ本国では輸出国への訓練部隊を編成したり、1965年に改良を加えた特別仕様機をF-5Cとして評価作戦”スコシタイガー作戦”に派遣しましたが、第一線で使用する作戦機として採用することはありませんでした。この作戦名のスコシは日本語の「少し」に由来するものですが、”little”や”small”の誤翻訳である雰囲気が半端ないです。

1973年に登場したF-5E”タイガーⅡ”はこのF-5Aの発展型となります。

エンジンの推力が2割増しとなり、設計の見直しと空戦フラップの追加により空力特性が向上しているほか、限定的な性能ながらレーダーも搭載されました。

当時敵対していたソ連のミグ21の機体特性を模擬する上で適していたため、1975年にはアメリカ空軍および海軍でもアグレッサー部隊に異機種間空戦訓練(DACT)用にT-38 タロンの後継として配備され、アメリカ海兵隊もこの流れに続きました。

優れた整備性と扱いやすさ、低コストのため西側陣営の諸国で長い間使用されていく中で多くの派生型も生まれた名機です。

アメリカの映画『トップガン』でミグ28として黒塗りのF-5Eが登場したほか、日本では漫画『エリア88』で主人公の風間真をはじめ多くの傭兵が本機を使用していたため知名度は高い方だと思います。

この『エリア88』の影響力は大きく、F-5Eをはじめ、試作機にすぎないF-20やX-29などのマイナーな機体が後のゲーム、エースコンバットシリーズに登場したことや、ゲームシステムの報酬によって機体を購入する仕組みや高度制限などを含めたミッションの存在などはこの作品によるところが大きくあります。

エースコンバット5では主人公の初期使用機体ですが、サンド島という僻地にて運用されている機体としてはとてもマッチしていたと思います。

キットについて

2006年に中国で創業した新興模型メーカー、ホビーボス(英文:HOBBYBOSS)製の1/72スケールキットです。価格は定価で990円ほど。日本の童友社が輸入をしているため量販店などでは800円前後で購入できると思います。

中学生の頃にタミヤ(イタレリ製)のF-5Eを作ったことがありましたが、勝手がわからず(かつ予算もなく)、とりあえず適当にスプレー缶で暗いグレー1色を塗っただけで作りました。最近になって、手軽に飛行機を作りたくなり、いつの間にか処分してしまったF-5Eを思い出してAmazonで調べたところ、このキットを見つけました。

左がタミヤ、右がホビーボスのパーツ表。いずれもシンプルな構成です。

内容はタミヤの製品に酷似しています。

パーツの分割は主翼が別パーツになっている以外は同じです。ただパネルラインが、タミヤの凸モールドに対して、このキットは凹モールドになっています。

デカールに関してタミヤはアメリカ、マレーシア、スイスに所属する機体を再現可能なのに対し、こちらはアメリカの海軍と海兵隊、ブラジル、スイスの所属が再現できます。

A4サイズのカラーガイド(両面印刷)が付属し、Mr.カラーとタミヤカラー、ファレホなどの色指定が記載されているはありがたいですね(正確かどうかは別)。

離型剤が結構残っているので、普段ランナーを洗浄しない方も作る前にしっかりと洗浄することをオススメします。タミヤ版とは異なり、パイロットが付属しますが、出来があまり良くないため、使用しないか他のキットからの流用が現実的な選択肢となります。

武装は増槽のほかにAIM-9Bのような第2世代のサイドワインダーと無誘導爆弾(Mk.82)が付属します。タミヤ版も増槽が3本あるのは同じですが、無誘導爆弾(Mk.83?)とサイドワインダーの造形が異なっています。ホビーボスの方が出来は良い印象です。

総評

作例のキットはストレートに組んだものです。離型剤の強さ以外、ネガティブな箇所は見受けられませんでした。

タミヤ版の作りやすさはそのままに、パイロット以外はモールドやエッジがしっかりしており、現状、1/72のF-5Eの決定版と言って良いキットだと思います。

タミヤ製がなかなか入手しにくくなっている一方、ネットをはじめ量販店や模型店でも売られているのを見たので入手もそれほど難しくはないと思います。価格がお手頃なのも嬉しいポイントですね。