【キットレビュー】Academy 1/72 F-8E クルーセイダー

今回紹介するキットはアカデミーの1/72スケール、F-8E クルーセイダーです。

F-8E クルーセイダーとは

F-8Eクルーセイダーはアメリカのチャンス・ボート社が開発した戦闘機で艦上機としては世界初の超音速戦闘機です。

1952年にアメリカ海軍が超音速戦闘機を要求したことから開発が始まり、1955年3月の試作初号機が初飛行で音速を突破し、その後も速度記録や飛行記録を更新することになる傑作機となりました。

視界確保のためにコクピットは機首よりに配置し、エアインテークも妨げとならないよう機首の下部に設置され、独特の形状を作り上げています。この機首とインテークの位置関係が図らずも高速飛行時に空気の流れを整え、効率よくエンジンに空気を送り込むショックコーンの役割を果たすことになりました。同じエンジンを使用する空軍のF-100 スーパーセイバーのマッハ1.3に対し、本機はマッハ1.7を出すことができました。

本機独自の機構として主翼全体を持ち上げて迎え角を確保するシステムを搭載しています。
航空機は低速時にフラップと呼ばれる高揚力装置を用いるほか、機首を上げることで揚力を確保します。本機の前身にあたるF7U カットラスはフラップをもたない設計のため、機首を大きく上げることで揚力を確保しましたが、離着陸時の視界不良が原因で事故が多発しました。これを受けて視界確保のために離着艦時の機首の上げ角を抑えようとした結果、この機構が誕生しました。

1958年から部隊配備が始まり、ベトナム戦争にも投入されました。
当時最新機種であったF-4ファントムⅡはミサイル運用を主眼に置いた設計で機関砲を持たないにも関わらず、誤射防止の観点から目視後のミサイル発射を原則としていたため格闘戦を強いられる機会が多くありました。
このほかにも当時のミサイルの命中率の低さや想定外であった格闘戦に対する訓練不足など、様々な背景からF-4が格闘戦に苦戦していた一方、F-8は軽快な運動性とコルトMk.12 20mm機関砲を左右に2門ずつ、計4門装備していたことから”The Last Gunfighter”と呼ばれました。総撃墜数ではF-4に劣るものの、キルレシオではどの航空機よりも優れていました。

開発以降も改良が重ねられ全天候能力の付与やレーダー、火器管制装置が更新されました。E型は電子機器の更新のほかに主翼下にパイロンを増設し4000ポンドまでの爆装が可能になり、対地攻撃能力を強化した機体になります。

漫画『エリア88』にて主人公・風間真の搭乗した機体として有名ですが、近年のゲームなどではF-4以降の戦闘機の露出が多いため、最近の戦闘機に比べると本機は知名度の面で一歩譲ります。しかし独特の形や設計思想などに強い個性が見られて、なかなか面白い機体です。

キットについて

かつてハセガワの1/72のクルセイダーを作ったことがあります。ハセガワのキットは凸モールドの簡素なもので、かなり昔に発売された製品ということもあり、リニューアルが期待されていました。

アカデミーから発売されたキットは、全体に精密な凹モールドが施されているほか、ランディングギアやコクピット周りのディテールも良好で多くのモデラーから好評を博しました。勿論、本機の特徴である主翼全体を持ち上げることで迎角を変更する機構も選択式で再現可能です。
組み立て説明書とカラーリングとデカールの取り付け位置のガイドは別々になっています。

本機のように大きなインテークを持つ飛行機は合わせ目の処理が気になるところです。ハセガワの1/48スケールのF-2では結構手こずりました。しかし、このキットはインテークの合わせ目が目立たないよう工夫されていますので、ストレスなく組むことができました。

武装は短射程空対空ミサイルのサイドワインダーと対空・対地無誘導ロケット弾であるズーニーロケット弾が各4発ずつ、Mk-82 スネークアイが8発付属します。Mk-82の取り付けるためのマルチ・エジェクター・ラックも付属します。

Mk-82 スネークアイは通常のMk-82の尾部のフィンが傘のように開いて落下速度を抑える仕様のものです。これは低高度で投下した際、母機が爆発に巻き込まれることを避けるために考案されたものです。

総評

パーツの合いもよく、デカールの質も良好で海外キット特有の組みにくさを感じることはありませんでした。

精密なモールドとディテールが施されており、2020年現在でも1/72スケールにおけるF-8Eキットの決定版と言える製品です。モデラー界隈でもその出来の良さから人気は高く、「見つけたら即買い」と評価されていることもあります。このため品薄になりやすいのが玉に瑕です。とはいえ、定期的に再販されているので入手難度は高くないと思います。

ハセガワの1/48キットのコピー疑惑がありますが、ハセガワの1/48キットに触れたことがないため真意は不明です。こうした疑惑が起きる前にハセガワには1/48の縮尺を変更したリニューアルキットを出してほしかったですね。