今回のキットレビューはHGUC ガンダムF91です。
機体はもちろんのこと、世界観やBGMなどOVA全体が好きな作品でした。スーパーロボット大戦IMPACTでは戦闘用BGMに「君を見つめて -The Time I’m Seeing You-」が収録されており、終始この機体を使用していました。
OVA作品はこれまでの宇宙世紀から大きく路線変更を試みた意欲作なので、未視聴の方には是非見て頂きたい作品です。
ガンダムF91とは
F91はOVA『機動戦士ガンダムF91』に登場したモビルスーツ(以下、MS)です。
連邦海軍戦略研究所(通称:サナリィ)がMSの小型化を連邦政府に打診し、立案された計画がフォーミュラ計画です。このフォーミュラ計画によって開発された機体がF91です。宇宙世紀0116年には機体が完成していましたが、搭載されているバイオ・コンピューターの調整が難航しており、OVAの舞台となる宇宙世紀0123年3月まで量産体制には至っていませんでした。
もともとは型式番号の「F91」が正式な名前でしたが、劇中にて本機が搭載されていた連邦の艦船、スペース・アークの艦長代理であったレアリー・エドベリが見た目が似ているという理由で「ガンダムF91」というコードを提案したことが始まりです。
F91のデザインはこれまでのMSのデザインとは一線を画すものとなっています。
お椀型のバーニアノズルを廃止し、曲面主体のデザインでまとめられた。
各部の展開するフィンや胴体の重ねた形状などはエンジンの放熱フィンがモチーフとなっています。これは当時流行していたF-1やバイクの意匠が取り入れられていることに由来しています。
前作のOVA『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の主役機であるνガンダムが22mに対し、F91は15m程になっています。
もともと初代ガンダムは全高18mでしたが、後発のMSはより強力な火力や機能を搭載するために高出力なジェネレーターを積載する形で開発競争が進み、MSは大型化の一途を辿ります。(このあたりの話は旧HGのZZガンダムの説明書で述べられているのですが、今では入手しにくくなっていますね…。)この恐竜的進化の結果、深刻なコストの増大を招くことになったため小型化の方針が組み込まれました。
従来のMSに比べて革新的な機構、武器が採用されていることも大きな特徴です。
ビームライフルやビームサーベルの他に、ビームバズーカの発展型であるビームランチャーやビームシールド、そして大型高出力ビームライフル、ヴェスバー(Variable Speed Beam Rifle)が搭載されています。ヴェスバーは背部のジェネレータに直結しており、発射速度と出力を調整可能なビーム兵器です。このようにジェネレーターの高出力化により、目新しい武装が多数採用されています。
また本機はサイコミュシステムの発展型であるバイオ・コンピューターを搭載しています。機体が得た情報をダイレクトにパイロットへ伝達することができ、最大稼働状態では放熱のために各部のフィンが展開し、機体表面の金属が剥離する現象が発生します。展開するフィンと共に顔のフェイスカバーが外れることも斬新でした。
※余談ですが、劇中においてバイオ・コンピューター最大稼働時でなくてもフィンが展開していることが確認できます。
キットについて
このキットは2013年12月に1320円(税込み)で発売されました。
従来のMSより小型であることが特徴ですが、現実世界の問題としても同様に模型の材料費を抑えたいという目論見がありました。しかし、当時の技術では1/144スケールにポリキャップや可動軸を仕込みつつデザインをまとめることは強度的に難しかったため、1/100スケールでの販売になり結果的に価格が上がってしまいました。数年後にVガンダムの1/144スケールキットが発売されます。Vフレームと呼ばれる共通フォーマットを利用したものですが、可動範囲はいまひとつでした。
こうした経緯があり、一度は1/144スケールでの立体化が見送られたF91でしたが、HGオールガンダムプロジェクトと呼ばれるバンダイのキャンペーンにより、晴れて商品化されることになりました。
HGオールガンダムプロジェクトとは、2013年にTVアニメ「ガンダムビルドファイターズ」と連動した企画で、これまでHG化されていなかった主役級の機体を立て続けに商品化するというものでした。ABSから新しい軟質プラスチック素材、KPSへの置き換えと可動範囲の広い関節を共通フォーマットとした商品展開がなされました。
頭部
ヘルメット状の装甲の着脱方式は劇中と同様です。
設定画より一段小さくなった印象がありますが、細部まで造形がしっかりしています。フェイスガードの展開は差し替えにて再現可能です。
胴体
こちらも昔のデザインと比べてかなり印象が違います。もともと腹部はエンジンのフィンをモチーフとしたデザインのため、もう少し繊細なイメージがありましたが、フィンにあたる箇所が厚くなっていますね。背部から突き出たジェネレーターは大量のスラスターがついており、塗装派にとっては泣き所の一つとなっています。
腕部/肩部
肘は二重関節を採用しているため、可動範囲はとても良いです。またハンドパーツは穴の空いた通常の握り手が左右1つずつ付くほか、手持ち武器を持たせるための握り手も左右に1つずつあるため。左手でも各種武器を持つことが可能です。
肩部より展開される放熱フィンは差し替えにて再現可能です。
特徴的な”F91”の赤いロゴはスジボリが彫られているため塗装派にも優しい仕様です。
脚部
腕部同様、脚部の可動範囲も良好です。ただ、脚部と足首をアンクルアーマーを介してつなぎますが、アンクルアーマーが少し外れやすい印象があります。
ふくらはぎの放熱フィンを再現してあるのは驚きました。ただ展開フィンは特別薄いわけではなく、裏側までは再現していないので、作り込む余地はありそうです。
武器
ビームサーベルは二本付属します。
刃もクリアグリーン成型のものが2本付属するのでバグ退治も捗りそうですね。個人的には刃が少し長い気がしました。
ビームライフルは旧1/100キットではグレー一色でしたが、色分けがちゃんとされています。ビームランチャーは上部パイプとマガジン部のグレーに塗装が必要ですが、グリップやマズルはグレーで色分けされています。
ビームランチャーはグリップが稼働するほか、腰部背面にラッチパーツを介して懸架させることができます。
ビームシールドは差し替えにて展開状態を再現可能です。
本機のウリの一つであるヴェスバーは差し替えなしで展開状態を再現可能です。ただし、細い可動部を動かしていくため、慎重に動かさないと力加減でポッキリいってしまいそうで注意が必要です。
総評
なんといっても小さいです。そして小さいキットながら、脚部のフィンやヴェスバーなど動くギミックが搭載されており、各部のディテールもしっかりしている点がこのキットの魅力です。反面、可動箇所が繊細で壊れやすそうな印象があるため、ポーズを付ける際に気を使います。
フォーミュラシリーズのデザインに共通して言えることですが、ところどころに黄色い三角形のマークがあるため、塗装派だと細部塗装する箇所がちょっと多いかなという印象があります。
念願の1/144スケールにて立体化されたF91ですが、過去に発売され評判が今一つだったMGのF91とスタイルが似ていることから敬遠する人もいますね。確かに原作の設定画と見比べるとプロポーションは頭や肩の大きさをはじめ各部のサイズが違います。
これは共通フォーマットによって関節に制限があることや現代のデザイントレンドに合わせているのだと解釈していますし、個人的にはかっこいいと思ってます。F91は好きなOVAだったため、このシリーズで立体化してくれただけ有難いです。
キットのレビューは以上となりますが、次のページでは本機が登場したOVA『機動戦士ガンダムF91』について簡単に解説しています。