【キットレビュー】タミヤ 1/35 軽装甲機動車

今回はタミヤより発売されているAFVキットより1/35スケール、陸上自衛隊 軽装甲機動車 イラク派遣仕様を紹介します。

AFVとは

AFVとは”Armoured Fighting Vehicle(=装甲戦闘車両)”の略で、攻撃用の武装や防御用の装甲を備えた戦闘用車両のことを指します。戦車や自走砲などもこれに分類されます。

厳密には防御用の装甲を備えていないジープや攻撃武装を搭載していない警備用の車両やトラックはこのジャンルに入りません。正式な分類では無装甲車両(Softskin)が正しいですが、模型的観点からはこれらもAFVキットとして分類されています。

日本では一昔前はAFVキットはあまり勢いがありませんでしたが、ワールド・オブ・タンクスやガールズ&パンツァーなど戦車を題材としたメディアのおかげで近年盛り返しつつある印象を受けます。一方、戦車発祥の国イギリスをはじめ、欧米各国では第二次世界大戦にてヨーロッパで大量の戦車が投入されたこともあり、日本よりも普遍的なジャンルのようです。

軽装甲機動車とは

自衛隊が2002年度から配備している装輪装甲車です。
Light Armored Vehicleの頭文字からLAV(ラヴ)またはライトアーマーと呼ばれています。

もともと自衛隊では兵員輸送のために高機動車や73式大型トラックを運用していましたが、防御用の装甲を持たないため戦闘に適していないという課題を抱えていました。

敵が小火器などで武装しているような状況下でも運用できる装甲と高い機動性を備えゲリラや外部からの侵入対処にも対応できるよう1997年に開発が始められたのが、この車両です。そのため本車両も厳密な区分としてはAFVではなく、IMV(Infantry Mobility Vehicle)、歩兵機動車になります。

装甲者としては最小クラスの大きさながら、不整地での走破性に優れ、ヘリや輸送機での空輸や投下も可能な堅牢性を持っています。これにより島嶼部や遠隔地域への展開能力が向上しました。

2003年度のイラクの自由作戦ではイラク復興支援群として、過酷な環境での使用を想定し追加装甲や防弾ガラス、ワイヤーカッターなどを装備した改修型の本車両が派遣されたことがメディアでは大きく取り上げられました。

キットについて

2004年にタミヤより上述したイラク派遣仕様にて発売されたキットで、私が初めて製作したAFVキットになります。ウェザリングもこの時が初挑戦でした。AFVと言っても一般的な車に近い構造のため、カーモデルのような感覚で組み立てることになります。

カーモデルと同様にサスペンションを組み立てて行きますが、車体がタミヤの1/48シリーズで使用されているようなダイキャスト製のシャーシのため、サスペンションと車体の接着には瞬間接着剤が必須となります。また後部はビスで固定するためドライバーも必要です。

シャーシがダイキャスト製で重いため、プラスチックの細いサスペンションは強度的にすこし不安があるほか、しっかり接着しないと完成後もちょっとした衝撃でパーツがポロポロ落ちるのでやや難がある印象です。ちなみにタミヤのダイキャスト製シャーシは金属むき出しではなく、サフまで済んでいる状態で梱包されているため直接塗装することができます。

車体内部も再現されており、普段見ることのできない内部をうかがい知ることができます。

ボディの上部構造の組み立てでようやくAFVらしい作業となります。追加装甲板やワイヤーカッター、スモークディスチャージャーなどの各種装置を取り付けていきます。

塗装にあたっては適当に調色したMr.カラーを使用しました。
ウェザリングは戦闘を含めない運用のため、砂埃だけつけるイメージで行いました。薄い茶色をエアブラシで全体に軽くミスト状に吹いた後にウェザリングマスターで車体下部を中心に汚しを入れてみました。

上部のハッチは開閉選択式で、開状態を選択すると内部を見ることができます。機銃、追加装甲版は旋回させることができます。

総評

同スケールの74式戦車との比較

完成後のサイズは割と小ぶりです。他の1/35スケールの戦車と合わせると大きさが実感しやすいと思います。このサイズで税抜き3,400円はちょっと高いかなという印象があります。

先述の通り、AFV的要素とカーモデル的要素を含めた面白いキットです。ダイキャスト製のシャーシによる強度不安があるのが残念なポイントですが、この部分を除けば組み立てやすいキットです。

2016年に1/48スケールで、2019年には1/35スケールでも通常仕様の軽装甲機動車が発売されましたことで選択肢が豊富になりました。ジオラマで他の車両と組み合わせると大きさにメリハリができるので面白いのではないでしょうか。