【キットレビュー】タミヤ 1/72 零式艦上戦闘機二一型

日本海軍の生んだ名機・零戦。

零戦(ぜろせん、れいせん)の略称で有名ですが、正式には零式艦上戦闘機(れいしきかんじょうせんとうき)と呼びます。

漫画や映画など色々なメディアに登場した有名な機体なので、軍事モノにあまり馴染みがなくても「いつかは作ってみたいなぁ」と思わせる。そんな興味を掻き立てる存在ではないでしょうか。

人気な機体だけに多くのメーカーから様々なバリエーションものが発売されていますが、今回はその中でもポピュラーなタミヤの1/72ウォーバードコレクションシリーズのキットを購入しました。製作を検討されている方は是非ご覧になってください。

実機の解説

零式艦上戦闘機の誕生は1937年に日本海軍が九六式艦上戦闘機の後継(十二試艦上戦闘機)を求めたことから始まります。

この要求の中で最大速度500km/h以上の速度性能、優れた空戦能力、巡航速度で6時間以上の航続性能、(当時としては重武装である)20mm機銃を装備することなどが盛り込まれておりました。これは当時、現実不可能と思われる要求ではありましたが、三菱の設計主務である堀越技師によって開発に成功しました。

この十二試艦上戦闘機に中島飛行機が開発した空冷エンジン「栄(さかえ)一二型」を搭載し、プロペラを2翅から3翅へ変更したものが零戦一一型として日中戦争に投入され、圧倒的な戦果を挙げました。

この零戦一一型を空母での取り回しを容易にできるよう手が加えられたのが、零戦二一型です。

空母のエレベーターでの運用に支障がないよう翼端を50cm折りたためるようになっているほか、着艦フックや無線帰投方位測定器などの艦上機として必要な装備が追加されました。この二一型は真珠湾攻撃を皮切りに太平洋戦争の緒戦で投入されました。

この零戦がどれほどの性能差であったか、同世代のグラマンF4Fワイルドキャットと比較すると以下の通りです。

機体 零戦二一型 ワイルドキャットF4F-3
最高速度 533.4km/h(高度4,700m) 529km/h(高度6,431m)
航続距離
(増槽あり)
3,502km 2,285km
武装 九九式一号20mm機銃2挺(弾数各60発)
九七式7.7mm機銃2挺(弾数各700発)
AN/M2 12.7mm機関銃4挺(弾数各450発)
自重 1,754kg 2,441kg

上記の表から航続距離の面で頭一つ抜けていることがわかります。

もちろん設計思想や運用方針によって機体の性能は変わってくるものです。特にF4Fは頑丈さと生産性を重視した機体で零戦とは対照的な設計思想を持つものでした。

このように零戦は長大な航続距離、優れた格闘性能、高火力を誇る20mm機銃に加え、この機体性能を余すことなく発揮する熟練パイロットの腕も相まって目覚ましい活躍を見せ、開戦当初は連合軍相手に不敗神話を築き上げる伝説的機体となりました。

キットについて

タミヤより2012年9月に1,400円(税抜き)で発売されたキットです。

零戦と言えば緑色のイメージが強い方もいると思いますが、太平洋戦争初期は機体全面が緑がかった灰色で塗装されていました。パッケージの零戦は灰色が強いですが、説明書の指定色はより緑色が強いものになっています。

キットの内容はポリキャップ、クリアパーツ、2枚のランナーとカウリングから構成されています。比較的新しいキットだけあってスジボリがとてもキレイです。

説明書のほかに零戦について解説したパンフレットが付属しており、あまりよく知らない方も零戦への理解を深めることができます。

コクピットの再現度はとても高いです。同じスケールのハセガワの零戦を作ったことがありますが、それよりも再現度は高い印象です。

ただ、パーツ一つ一つがとても細かい分、塗装や組み立てに気を遣いました。

製作にあたってキット以外に購入したのが、窓枠用マスキングシートとモデルカステンのメタルリギングです。

マスキングシートは今回初めて導入してみました。Amazonで社外品が200円前後で発売されています。

レシプロ機は窓枠の形状が現用機に比べて複雑なので苦手なのですが、これがあれば丁寧に貼るだけです。およそ200円で苦手なマスキング作業からの解放と失敗するリスクを回避できたので今後もレシプロ機を作るときはマスキングシートも合わせて買おうと思います。

メタルリギングは機体上部のアンテナ線を再現すべく購入しました。

今回塗装はクレオスのミスターカラーを使用しました。

主な本体色は以下の通り、カッコ内は色番号です。

  • 本体色:灰緑色[128]
  • コクピット:コクピット色(三菱系)[126]
  • カウリング:カウリング色[125]
  • ギアベーン内部など:青竹色[57]

墨入れはジャーマングレーとホワイトを混ぜたエナメル塗料で行い、仕上げは半光沢[181]をトップコートしました。

ウェザリングをして塗装が剥げつつある機体もカッコいいのですが、「零戦はピカピカに磨き上げていた」とか、「コクピットはいつも綺麗にしていた」という整備員の証言もあるので今回は汚しなどは入れず、ストレートに作りました。

総評

1/72スケールと小ぶりながら非常に情報量が多く、とても素晴らしい出来のキットでした。

精密感のあるモールドはもちろんのこと、パーツの合いがピッタリで、組んでいて気持ちが良いくらいでした。特に胴体と主翼の接合は隙間が空いたり段差が生まれがちですが、このキットではパチッと収まったので、流し込み接着剤による接着だけでほかの処理の必要がありませんでした。

ただ、初心者の方だとパーツの細かさに苦労すると思います。特にピンセットなどを用意していないと接着が難しい部分もあるので、少し縮尺を上げた同社の1/48スケールのほうが組み立てやすいかもしれません(値段も大差ありません)。