【キットレビュー】プラッツ 1/72 航空自衛隊 支援戦闘機 F-1

今回紹介するキットはプラッツの1/72スケール、航空自衛隊支援戦闘機 F-1です。

1962年、航空自衛隊はマッハ2級のジェット戦闘機F-104Jを次期主力戦闘機に決定しました。航空自衛隊では日本全土で待機状態を維持するために13個の飛行隊が必要であるとし、この中の3個飛行隊は支援戦闘機部隊であることを算出しました。

支援戦闘機部隊の主な任務は、脅威となる部隊の侵攻を水上または地上(つまり水際)で阻止する部隊で、運用する航空機は地上攻撃能力のある支援戦闘機が望ましいとされました。

支援戦闘機とは当時の航空自衛隊独自の用語で、一般的には戦闘爆撃機、攻撃機に分類される機体を指します。「攻撃」という用語を避けるべく地上部隊を支援する意味合いから「支援」戦闘機という名称が使用されました。2005年からは多用途戦闘機、あるいは単純に戦闘機と称しています。

当時新鋭機であったF-104Jが戦闘機部隊へ配備され、余剰となったF-86が支援戦闘機部隊に充当されることになりました。

写真:第2航空団第203飛行隊所属のF-104J(1982年)

1967年、F-104Jの乗員を育成するための超音速高等練習機として三菱T-2の開発が始まります。練習機のみの開発は生産機数が少なく、コストの上昇を招きます。この頃からT-2を改造し支援戦闘機に転用し、生産単価を抑えるプランが温められることになります。

1969年、日本は主力戦闘機としてF-4EJの配備が決定しました。しかし予算の兼ね合いから老朽化したF-86を完全に置き換えることができなかったことと、F-4EJは爆撃計算機能が削除されており、地上攻撃能力が低下していました。

こうしたF-4EJの運用上の制約を補完するハイ・ロー・ミックス構想として支援戦闘機を導入することとなり、以下の2案が検討されました。

一つ目は当時開発中であった高等練習機T-2を戦闘機として改造する案、もう一つはアメリカのノースロップグラマン社が自由主義陣営向けに開発した軽量戦闘機F-5を採用する案です。

生産コストを低減する目的から、T-2を改造する案が採用され、誕生した機体がF-1になります。ベースとなったT-2の後部座席を電子装備搭載スペースに置き換え、航法装置のほか火器管制装置が設置され、爆撃照準機能が付与されていることが大きな特徴です。

固定武装である20mmバルカン砲のほかに胴体と主翼に合計7つのハードポイントを持ち、各種兵装を懸架可能です。

主な兵装はAIM-9サイドワインダー、Mk-82 500ポンド爆弾、750ポンド爆弾、JLAU-3ロケット弾などのほかに国産対艦ミサイル、80式対艦誘導弾(ASM-1)の搭載能力を持っていました。この対艦ミサイルは日本の広大な海域を防衛するため、F-1と並行して開発が行われました。

F-1は77機が生産され、1977年の運用開始から2006年の退役まで、日本の防衛任務に従事しました。

キットについて

このキットはプラッツより2013年11月に発売されたキットです。

これまでは1/72スケールのF-1を作成するとなると、ハセガワのキットしか選択肢がありませんでした。ハセガワのキットは発売時期が古い凸モールドキットであったため、なかなか手が出にくい存在でした。

もともと気になる機体でしたので、発売がアナウンスされた際に予約して購入したのを覚えています。

キットの内容は凹モールドであるほかにカルトグラフ社のデカールが付属するほか、増槽や武装などの吊るしものも付属します。具体的にはAIM-9Lサイドワインダー、ASM-1対艦ミサイル、CBLS-200ディスペンサー、2種類のエジェクターラックなどです。

説明書にミスがあり、コクピットの計器盤のパーツがB19を組むよう指示がありますが、正しくはB23です。ファーストロット以降は修正されているのか気になるところです。

説明書は他社に比べて紙がやや薄いのが印象的。塗装指示などで困ることはありませんでした。

胴体下面にベントラルフィンを取り付ける工程で溝を開口する作業があります。ピンバイスによる単純な穴あけではないので、慣れてないとやや注意が必要かもしれません。

ギアの接着は大きめのダボなので強度面では不安はありませんが、形状の複雑さとクリアランスの関係から遊びができやすい気がします。ギアを取り付ける際は機体が傾かないよう注意しましょう。写真のキットは傾いてしまいました。。

総評

細長い胴体と小さな主翼の構成で非常にスマートなフォルムであることがよくわかります。

上述した通り、説明書の誤記とギア周りの組み立てに少しハードルを感じるほか、機体の迷彩塗装も複雑なので、キレイに仕上げたいとなるとちょっと気を遣うキットです。飛行機模型に慣れた人向けといったところでしょうか。

しかし、海外製品のようにそもそも寸法が合わないということはないので、丁寧に組むことを心掛ければ見ごたえ抜群のF-1が手に入ります。

流通も比較的安定しており、量販店でも見かけることができるため、現状の1/72スケールキットでは決定版と言って過言ではないでしょう。