【キットレビュー】アオシマ 1/24 スプリンタートレノAE86

今回紹介するキットはアオシマより発売されている 1/24 頭文字Dシリーズ 藤原拓海 86トレノ 第1巻仕様です。劇中では主に「ハチロク」「トレノ」等の名称で呼ばれています。過去の作例を載せつつ、実写とキットの紹介をしていきたいと思います。

トヨタ AE86について

AE86とはトヨタが1983年から1987年にかけて製造・販売したカローラとスプリンターのスポーツクーペ版であるカローラレビンとスプリンタートレノとの2車種の共通車両型式番号です。

トレノ(TRUENO)とは雷鳴を意味するスペイン語です。

カローラとスプリンターは同じトヨタ製で搭載しているエンジンも同じですが、販売チャンネルが異なる、いわゆる姉妹車種の関係にあります。スプリンターはトヨタオート店、カローラはカローラ店でそれぞれ扱っている車両で、販売実績においてはカローラ店が上回っていたことから、”ハチロク”と言えばカローラレビンを指していました。

AE86は1983年に発売されましたが、日本では1979年にターボが解禁されたことで過給機構による高出力化か、普通自動車のFF(前輪駆動)化による居住性の向上がトレンドとなっており、過給機を使用しない1.6ℓの自然吸気エンジンでFR(後輪駆動)の組み合わせでサスペンションも先代(TE71型)から流用したAE86は当時の最先端の国産スポーツカーと比較し見劣りする車でした。

しかし、既存のサスペンションを流用しているため改造が容易であったことやエンジンの素性の良さからジムカーナやラリーなどの競技車両として愛好家の間で長年にわたって親しまれる車になりました。

頭文字Dについて

上記の「ハチロク=カローラレビン」という図式を崩したのが、しげの秀一氏の漫画『頭文字(イニシャル)D』です。この漫画は『週刊ヤングマガジン』にて1995年から2013年まで連載されました。

ストーリーは主人公である藤原拓海が当時既に型遅れとなったAE86スプリンタートレノを駆り、その車両特性(と超人的なセンス)を活かして峠の草レースで馬力に勝るスポーツカーに挑んでいくというもの。いくつものレースを重ねていくうちに最初は車に対して興味がなかった拓海が、次第に車に向き合うようになっていく姿が描かれています。

アニメではエイベックス関連の楽曲が多く使用されていることも特徴の一つです。レース毎に使用されるユーロビート調のBGMが異なっており、また楽曲の挿入タイミングなど演出面でも凝っており、作品の雰囲気を盛り上げに貢献しています。

この作品の影響で、86トレノの中古車市場が高騰し、もともと愛好家の間で競技者として使われてきた車ということもあり、状態の良い車両を見つけることは困難になっています。

キットについて

このキットはアオシマより発売されているキットです。頭文字Dに登場した車を再現したシリーズになります。このシリーズの中で主人公の藤原拓海が操る86トレノは3種類発売されています。

第1巻に登場したAE86を再現したものはシリーズNo.05のナンバリングで、プロジェクトDに参加したAE86を再現したものがNo.01、ロールケージパーツなどを追加した37巻仕様のものがNo.06のナンバリングになっています。今回製作したのはNo.05のものになります。

マフラーやサイドミラーの部品はメッキ仕上げとなっています。

メッキの鏡面光沢は非常にきれいですが、パーツを切り離した際のゲート跡が目立つことと、そのまま塗装すると塗料をはじいてしまう厄介な存在です。

塗装したいメッキパーツはハイターにパーツを浸けてメッキを剥がして塗装をしています。原液で浸けても、水で薄めても大丈夫です。水で薄めるとメッキが剥がれるまで少々時間がかかりますが、小さなパーツであれば十数分もあれば剥がれます。なお、ドアバイザーは装着しているイメージがなかったので外しました。

メッキパーツはカーモデルでは珍しくありませんが、以下の3点に関してはこれまで作ってきたカーモデルとは大分印象が異なりました。

サスペンション

まずはサスペンション。前後サスペンションに本物のバネを仕込むことになります。

完成後上下に可動する面白い仕組みですが、接着に気を遣います。また、各部が細いプラスチックで成り立っているため強度面に不安が残るものの、組み立てて数年は経過してますが問題なく可動するので、普通に飾る分には問題ありません。

ボンネット

ボンネットは開閉機構を備えており、エンジンルームも再現可能です。

4A-Gエンジンやストラットタワーバーをはじめ、各種部品を自分で組み立てていくわけですが、色分けが細かく指示されています。一つ一つの部品も細かいので人によっては面倒に感じるかもしれません。

ヘッドライト

現代では珍しいリトラクタブル方式のヘッドライトです。

AE86はリトラクタブルライトという使用時にのみせり上がるヘッドライトを装着していますが、このキットでは開閉ギミックが再現されていて、組み立て後も開閉可能です。

部品も接着面も小さく、ここも指すペション同様、強度面で不安があり、展開させるには少し勇気が要ります。また開閉可能なボンネットと相まってフロント部がツライチ(面一、段差がなくフラットな状態のこと)になりにくいかもしれません。

製作にあたって

塗装は白黒のツートンを塗装するのですが、ウィンカーや車体中央のライン、窓枠などところどころ塗分けが必要です。白黒のツートンという色の特性上、白い箇所にはみ出るととても目立ちますので慎重に進めました。

インパネのドリンクホルダーにはコップが付属しており、メーカーのサービス精神(または遊び心)を感じますね。こだわりたい人はコップの内側からフチを薄く削り透明なボンドで水を再現してみても良いと思います。

個人的にはシャーシとボディの取り付けも少々難儀しましたが、もともと苦手なのでこの点は普通かもしれません。

総評

動くサスペンションやエンジンルームの再現、リトラクタブルライトの開閉など随所にギミックが込められたサービス精神旺盛なキットでした。細かいところまで作る分、少し手間がかかるため、まったくの初心者という方には少しオススメしにくいキットです。

しかし、パーツ自体の精度に問題はないため、丁寧に作ることを心がければ(強度面はともかく)完成させることができると思います。悪く言えば手間がかかる、よく言えば作りがいのあるキットです。

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