【キットレビュー】HGFC シャイニングガンダム

TVアニメ『機動武闘伝Gガンダム』の概要

『機動戦士Vガンダム』に次ぐアニメシリーズで1994年4月より翌年3月まで全49話が放映されました。

前作のVガンダムが商業的に振るわない結果となったため、Vガンダムの課題であった新規層、つまり子供に訴求力のある作品を本作が引き継ぐことになりました。

これまで製作に携わってきた監督である富野由悠季氏から今川泰宏氏へ交代。既存の世界観から脱却したまったく新しい物語を構築しつつ、当時流行していた格闘ゲームの要素を取り込みGガンダムは誕生しました。

放映当初の3か月は単調な展開が続き、その異質な世界観から古参のガンダムファンからも評判は振るわなかったものの、12話『その名は東方不敗! マスター・アジア見参』にて主人公ドモンの師匠である東方不敗が登場します。

ロボットより強い生身の人間という完全にこれまでのガンダム観の枠組みから外れた存在により売れ行きが順調に伸び、新しいガンダムの支持層の開拓にひとまずの成功を収めることができました。また、これ以降、複数のガンダムがメインキャラクターの機体として登場することや宇宙世紀とは別軸の物語、つまり「アナザーガンダム」の基盤を確立した作品になりました。本作の成功がなければ、今日までガンダムシリーズは続いていなかったと言われています。

Gガンダムの魅力

もともと低年齢層の取り込みを目的に製作されたため、子供に向けな演出がある点や独特な設定(と強烈なインパクト)を持つため、好き嫌いが分かれやすい作品だと思います。特にTVアニメを視聴せず、スーパーロボット大戦などのスピンオフ作品で描かれた部分だけを見ていると主人公像や物語のテーマなどは伝わりにくいと思います。

そこで、まだ本作品の魅力を簡単に説明してみたいと思います。

1.シリーズものにありがちな最初からストーリーや世界観を理解している必要がない

これはガンダムに限らずシリーズ展開している作品の宿命ですが、視聴にあたり世界観を理解しておきたいという心理は少なからずあると思います。たとえ製作陣が「シリーズを見ていない方も楽しめる内容になっています」とコメントしていたとしても、二の足を踏む人はいるのではないでしょうか。

Gガンダムは宇宙世紀という世界観から完全に脱却しており、設定的なつながりはなく、「ガンダム」というロボットの位置付けや操縦方法も異なっています。それも古参のファンがアレルギーを起こすほどに。

予備知識は必要としないというハードルの低さはこれからガンダムに触れてみようという方にはうってつけではないでしょうか。

2.「愛」というぶれないテーマ

異色扱いのGガンダムですが、格差関係は逆転しているものの宇宙と地球の対立構造を描きつつ、「人間同士が理解すること、分かり合うことの難しさ」というこれまでのガンダムシリーズのテーマを踏襲している点は見過ごされがちです。

またGガンダムは主人公のドモンを起点にいくつかの人間関係がクローズアップされます。

ヒロインはもちろんのこと。家族、兄弟、師弟。これらは物語の開始時点から「愛」という共通項を軸に関係性が進んでいきます。

キング・オブ・ハートの紋章を受け継ぐ主人公が物語の中で家族愛、兄弟愛、師弟愛を理解して成長していき、その集大成が最終回の演出や必殺技につながります。

ただの派手な熱血ロボットバトルで終わらず、強いメッセージ性を持っていることが本作の魅力とも言えます。こうしたテーマを意識して見てみるとまた面白い発見があるかもしれません。

3.主人公ドモン・カッシュの成長

多くのスピンオフでは正統派熱血漢として描かれているドモン・カッシュですが、それは精神的に成熟した後期の戦闘時のテンションであり、平時とは異なります。

特に物語の序盤は無口で不愛想、ガサツな印象が強くあり、どちらかと言えば兄に復讐を誓う悲劇の主人公という側面を持っていました。

挫折や出会いを経て精神面で成長していく描写はとても人間臭く、無敵系主人公に食傷気味の方には新鮮に映るのではないでしょうか。

またドモンの声優、関智一氏の演技力や声量についても注目したいポイントです。この時期が関氏の全盛期とする声も多くあり、必殺技を叫ぶシーンはスピンオフ作品の再録とは異なる迫力があります。ちょっとマニアックですが個人的には第10話「恐怖!亡霊ファイター出現」のダハールがDG細胞に侵食されていると見抜くシーンの絶叫は一聞の価値があると思います。

最後に

いかがでしたでしょうか。本作品には上記以外にも、ほかにも思わず笑ってしまうような独特な演出(特に超級覇王電影弾をはじめとする東方不敗とのくだり)や涙腺を刺激するような終盤の展開などが盛り込まれた感情豊かなエンターテイメント作品に仕上がっています。

これを機会にGガンダムに興味を持ってもらえると幸いです。

1 2