【キットレビュー】ハセガワ 1/48 紫電改 “後期型”

今回紹介するのはハセガワの1/48スケールキット、紫電改”後期型”です。

紫電改は川西航空機の開発した局地戦闘機で、帝国海軍最後の量産戦闘機でもあります。

局地戦闘機とは帝国海軍上の分類種別です。陸上から発進し、敵爆撃機を迎撃する事を主任務とした戦闘機のことを指し、乙戦とも呼びます。現在では迎撃戦闘機、要撃戦闘機などと呼ばれます。

帝国海軍の戦闘機と言えば零戦が有名ですが、この紫電改も人気の高い機体です。

大戦末期という登場時期や機体性能は勿論のこと、機体名の語感や精鋭部隊とされた第三四三海軍航空隊に集中配備されたことなどが人気を後押ししている要因でしょう。

紫電改のルーツ -強風と紫電-

川西 N1K1 強風(wikipediaより引用)

紫電改は機体開発のルーツは川西航空機が開発した水上戦闘機「強風」になります。

1941年末、川西航空機は水上機を主に製造していましたが、需要の減少により経営が危ぶまれていました。そこで、水上戦闘機である強風を陸上戦闘機化する案を日本海軍へ提案することになりました。当時、日本海軍では局地戦闘機「雷電」の開発が遅延していたこともあり、この案は承認され、局地戦闘機「紫電」が開発されました。

帝国海軍では1942年より命名規則が変わり、戦闘機であれば「風」、局地戦闘機であれば「雷」からそれぞれ機種ごとにモチーフの名称を割り当てるようになりました。

このため名称からおおよその区別はつけることができます。例えば、強風や烈風は戦闘機、雷電や紫電は局地戦闘機といった具合です。

因みに「紫電」とは、文字通り紫色の電光を意味しますが、転じて鋭い眼光や刀を振った際にひらめく刃の光などを指す単語です。

紫電は強風の機体を流用していますが、陸上機化にあたり各部が変更されています。

戦後アメリカに引き渡されてアメリカ本土でテスト飛行を行う紫電一一甲型
(Wikipediaより引用)

フロート装備を車輪に置き換え、尾輪の取り付けにあたり機体後部は大幅に変更されました。またエンジンを従来の三菱製の「火星」からより小型である中島製の「誉」に換装したため、機種部の設計も改められています。

このような経緯を経て紫電は誕生しましたが、性能は満足のいくものではありませんでした。

主翼が胴体の中央付近にあるため、構造上、主脚が長い設計となっています。このような期待を中翼配置と呼びます。

この長い脚を格納するための伸縮機構が搭載されましたが、全体的に強度が足りないことやブレーキの利きに左右でばらつきがあるなど、川西航空機の陸上機に不慣れな面が強く出ることになります。この脆弱な脚部と前方の視界不良が重なり離着陸時の事故が多発しました。

もともと連合国軍の新鋭機に対抗すべく、650km/h以上の速力を計画していましたが、実際は570km/h程で、これは当時陳腐化が進んでいた零戦と同程度の速度性能しか持ち合わせていませんでした。鈍重であり、空戦性能では零戦に劣ることと、先述の離着陸の難しさから操縦士からの評判は良くありませんでした。

紫電から紫電改へ

このように紫電は陸上機として未完成な部分が多くあったため、紫電の初飛行から数日後には川西航空機は紫電の低翼化に着手します。主翼の配置を胴体中央から下部へ変更し、主脚を短くして伸縮機構を廃止しました。また視界不良についても胴体全体の直径を絞り込むことで改善させました。

胴体部の延長や水平尾翼の取り付け位置を変えるなど各部を改良したほか、主翼には機体速度の荷重に応じて自動展開される自動空戦フラップも搭載するなど、実用性高められた機体が紫電改になります。

速度性能をはじめ、上昇性能や航続距離などが軒並み改善されました。また零戦の弱点であった防御性能についてもキャノピー正面には防弾ガラスを装備、燃料タンクは防弾仕様になりました。上記の自動空戦フラップにより良好な運動性能を獲得したことで操縦性も向上しており、全体的に高い評価を得ることになりました。

紫電改の完成度の高さから軍令部は局地戦闘機である本機を次期主力戦闘機として集中生産するという方針を打ち出します。1944年3月に軍令部は三菱へ雷電、烈風の開発中止と、紫電改の生産を指示することになりました。

このように紆余曲折を経て紫電改は日本軍機屈指の戦闘機として認知されるようになりました。

キットについて

このキットはハセガワより通常帯商品(JT74)として2400円で発売されています。

付属のマーキングは第三四三海軍航空隊所属の2機が再現可能となっています。

各パーツに繊細なスジボリが施されています。特に主翼下側の複雑なモールドの表現が印象的です。

パーツの合いはまずまずといったところ、一部ピンバイスを使って開口する個所があります。見落とさないようじっくり確認してから組むことをお勧めします。

水平尾翼は互いに組み合わさる仕組みになっています。これなら水平に角度がしっかり決まりますのでありがたいです。

尾輪の接着は説明書通りだと取り付け位置が見えないため、しっかり接着できているか不安になります。胴体を組み合わせる時点で挟んだ方が無難だと思います。

紫電改の特徴でもある自動空戦フラップは上げ下げのいずれかを選択可能です。

上げ状態にする場合、フラップのパーツを一部切り取る必要があります。説明書の記載はアバウトなため、現物を少し削っては主翼に合わせてまた削って…と地道な作業が必要になります。

1/72の零戦の製作時同様、今回もキャノピーのマスキングはサードパーティーのマスキングシートを使用しました。レシプロ機のキャノピーのマスキングは苦手なので本当に重宝します。

カラーリングは取扱説明書に準じています。汚しなどは行わず、仕上げは半光沢[181]にて行いました。

垂直尾翼からアンテナ支柱にかけてモデルカステンのメタルリギング0.15号を張ってアンテナ線を再現してみました。

最後に

先述したフラップと尾輪の取り付け以外は特に苦労することなく作ることができました。

前回製作した零戦が1/72スケールだったこともあり、非常に大柄に感じました。

もともと紫電改は太い胴体とフィレット(主翼後縁と胴体のつなぎ目)からボテッとした印象があり好きではなかったのですが、見る角度で印象がだいぶ違うことに気が付きました。こうした気付きが得られるのも模型製作の醍醐味ですね。